自分の口臭がどれだけ他人に迷惑をかけているか、心配になった事の無い人はいないでしょう。しかし、その心配も度を過ぎるとストレスとなり、そのストレス自体が新たな口臭を生み出してしまうなんて事になりかねません。
人間であれば、多少の口臭や体臭は誰しもが必ず持っているもの。必要以上に不安になったり、他人のコミュニケーションを避ける必要はありません。今回は、そんな口臭や体臭に対する心配や思い込みから発症してしまう、自己臭恐怖症(自臭症)について、原因や症状・改善方法をまとめてみました。
口臭を自覚するのは難しい
人間の鼻には、慢性的な臭いに慣れてしまい感じにくくなる特性があります。鼻のもっとも近い場所で臭い続ける口臭など、特に自覚する事が難しい臭いと言えます。
こちらは、株式会社マーシュによる2014年に調査されたオーラルケアに関する調査から「自分の口臭について気になっていること」に対してのアンケート結果です。
もっとも気になっている事は、自分の口臭の強さや有無が分からない事。また、自分の口臭が周りに迷惑をかけていないかなども上位に入っています。
やはり、口臭の原因や改善方法よりも、そもそも自分に口臭があるのかどうか、迷惑をかけていないかどうかが自覚出来ない事が何よりの不安になっているようです。
他人の口臭は日常的な臭いの中でももっとも嫌な臭いにあがるほど、嫌悪感の強い悪臭です。だからこそ人は、自分の口臭や体臭に必要以上に気を使い、時には過度な不安や思い込みから、自己臭恐怖症(自臭症)という症状を発症してしまう事があります。
自己臭恐怖症(自臭症)とは?
自己臭恐怖症(自臭症)とは、実際は臭っていないにも関わらず、自分は周りから臭いと思われていると思いこんでしまう、嗅覚に幻覚が出る幻嗅の一種です。
明確に自分の臭いを自覚出来ないからこそ、必要以上に自身の口臭や体臭に不安を感じてしまい、自分は臭いと思い込んでしまいます。
そんな勘違いや思い込みから、消臭剤やデオドラント・香水、制汗剤などを多用し、逆に過度な臭いをまき散らしてしまうような行動に出てしまうという本末転倒なケースもあります。
自己臭恐怖症(自臭症)の原因
几帳面で潔癖な性格な方に多く見られる症状で、口臭や体臭に関する周囲の軽い指摘や意見をきっかけに、周囲の人の表情やリアクションすべてが自分の臭いによるものだと思い込んでしまいます。
特に完璧主義者や完全志向の強い方は要注意。本来であれば、口臭や体臭などは誰にでもあるものですが、自己臭恐怖症(自臭症)の人はそれを誇大解釈してしまい、ほんの少しの自身の臭いさえも許せなくなってしまいます。
きっかけとなった臭いそのものより、必要以上に自分の口臭や体臭が気になってしまう事から、鬱病などに発展してしまう事も。そのような心理的なストレスによる影響から、口臭が悪化してしまう事も考えられます。
自己臭恐怖症(自臭症)の症状
自己臭恐怖症(自臭症)自体は、自分の臭いに過敏に反応してしまう行動ですが、それをきっかけに以下のような症状にまで発展してしまうケースもあります。
対人恐怖症
会話中に相手が少し横を向いたり、会話がすぐに終わってしまったりと、何てことない相手の行動でも、自分の口臭・体臭によって嫌われていると思い込み、円滑なコミュニケーションが取れなくなります。
鬱(うつ)病
自分の口臭や体臭による悩み・ストレスから鬱病を合併してしまい、自分の精神状態を上手にコントロールできなくなってしまいます。
引きこもり・自閉症
特に人が密集する場所やエレベーター、電車内など、自分の臭いを他人に近くで嗅がれてしまう状況に過大な恐怖を抱き、他人の反応やリアクションへの恐怖・不安から社会生活からの逃避行動に発展してしまうケースも。醜形恐怖症や強迫神経症と共通する特徴と言えます。
ストレス口臭
もともとは他人に迷惑をかけるほどの口臭ではなかったにも関わらず、自己臭恐怖症(自臭症)によって過度なストレスを感じてしまい、胃腸機能が低下してしまう恐れも。
胃や腸の機能(消化や排便)の機能が低下すると、未消化残留物の腐敗などからガスが発生し、血液によって全身を巡り、汗や呼気となって悪臭を排出してしまう事があります。
自己臭恐怖症(自臭症)の治療・改善方法
本来そんなに臭っていない口臭を、必要以上に不安になってしまう事が原因ですから、やはり、自分が思っているほど自分の口臭が臭くない事を自覚する事が何よりの治療・改善方法と言えるでしょう。
口臭チェッカー
客観的に自分の口臭を数値化してくれるのが市販の口臭チェッカーです。精度はともあれ、少なくとも自分以外の測定機が明確に数値として算出してくれるわけですから、これで一定水準以下の数値であれば、少なからず安心できるのではないでしょうか?
精神療法
強迫神経症気質の方は特に、根底にある完璧思考から抜け出せない人もいます。そのような場合はやはり精神療法による治療・改善も視野に入れるべきかもしれません。
高知県出身の精神医学者、森田正馬氏によって創始された神経症の治療法、森田療法は強迫神経症、恐怖症、心気症、不安神経症などに劇的な効果を発揮すると言われています。臭いに対する精神支援に加え、対人コミュニケーションにおける精神療法、思考改革も効果が期待できるそうです。
まとめ
というわけで、今回は口臭による自己臭恐怖症(自臭症)の症状や原因、治療・改善方法についてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?
前述の通り、口臭とは非常に自覚する事が難しく、かつ他人からの嫌悪感も強いやっかいなものです。真面目な方こそ、他人に迷惑をかけてはいけないという強迫観念から自己臭恐怖症(自臭症)に陥ってしまうケースも少なくありません。
口臭や体臭は誰でも多少は持っているものです。あまりに無神経なのも考え物ですが、必要以上に考え過ぎるのも逆効果になりかねません。どうしても自分自身で不安を取り切れないのであれば、歯医者や内科医など信頼の出来る第三者にきちんと診てもらい、安心を取り戻しましょう。